「何もできないという価値」お母さん業界新聞

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2015年09月08日の「あさチャン!」で放映され、反響が大きかったという、久留米市にお住まいの「お母さん業界新聞」記者・池田彩さんの記事、 「何もできないという価値」の全文を紹介します。 

 

「何もできないという価値」 

 

今日もお皿も洗えずに子どもたちと寝る。 

 

夜中に起きて、山になったシンクから 

なるたけ音を立てないようにと洗っている最中、 

1歳の次女がグズグズと起き出す。 

 

ヨシヨシと声をかけておっぱいを飲ませると、

すやすやと寝る。 

 

仕事をしようとパソコンに向かうと、

またグズグズッと泣き出す。 

 

オッパイをコクコクと飲み、スヤスヤと寝始める。 

 

よしよしとまたパソコンに向かうと、 

10分もしないうちにまたグズグズッと動き出す。 

 

「はーい」と返事をしてきりがいいところまではと 

パソコンに向かうと、ピーピーと泣き出した。 

 

「ハイハイ、ゴメンネー」と、 

パソコンに向かうのは観念して横になる。 

 

頭の中は仕事のことでいっぱいだが、 

一度仕方ないと観念すると、

娘の手の動きや様子が見えてくる。 

 

コクコクとおっぱいを飲みながら、 

小さな手を伸ばして私の顔を触る、鼻をつまむ。 

 

決してマッサージのように心地よい触り方ではないけれど、 

観念した私には、お母さんの心が広がっていく。 

 

あー、と愛おしくなる。 

 

また今日もなにもできんかった。 

 

皿も洗えない。 

洗濯もたためない。 

パソコンにも向かえない。 

 

できることは、ただただお母さんを感じることだけだ。 

 

言い訳だろうか。いや、そうではない。 

 

お皿を洗うことよりも、

洗濯をたたむことよりも、 

パソコンに向かうことよりも、

大事にしたい「今」。 

 

ほら、ほら。また「ママ」って呼んでいる。 

 

お母さん大学ニュースより)