妻に架ける橋

ここ数年の、ゆるキャラ(R)、ご当地キャラクターブームに乗り、毎年「世界キャラクターさみっとin羽生」を開催して賑わいを見せている街、また、東洋経済の「住みよさランキング2015」において県内第2位、関東でもベスト10入りし、にわかに耳目を集めることとなった(?)埼玉県羽生市。その羽生市に、知る人ぞ知る愛妻伝説があった。

今から12年前の2004年、100年ぶりに全面改修され新しくなった羽生駅舎の自由通路は、東武伊勢崎線と秩父線とにまたがり駅の東口と西口とを繋いでいる。東西どちらにもエスカレーターとエレベーターが完備され、自由通路は電車を利用する人々にはもちろん、電車を利用しない人々にとっても利便性の高いものとなっている。その自由通路に、羽生市発展の土台の一翼を担った金子農機株式会社の創業者、金子専一氏が作詞した歌「妻に架ける橋」と全額私費で『りくはし』を建設した市民への貢献を顕彰する『“りくはし”メモリアルボード』が掲げられている。

エスカレーターやエレベーターどころか、まだ橋そのものが無かった時代。事故の悲劇に涙した妻りくさんの優しさと、妻の遺志を継いだ金子専一氏の溢れる妻への思いが伝わって来る「妻に架ける橋」の歌詞。題名が金子専一氏の愛妻家を物語っているように思えて心を打たれる。形あるものはいつしか消えて無くなる宿命にある。『りくはし』は遺せなくとも、金子専一、りく夫妻の思いは永遠に受け継がれ、消えることはあるまい。ひょっとしたら、ここは、愛妻家の魂が宿る「愛妻家の聖地」なのかも知れない。

「りくはし」メモリアルボード 妻に架ける橋 羽生市 金子專一