人生を変えた食べ物

子供の頃、学校給食に出されるぶどうパンがどうしても嫌だった。コッペパンに干しぶどう(当時はレーズンだなんて洒落た言い方はしなかった)が埋まっている。ちょっと潰れかかった様な妙な食感となんとも言えない酸味がかった味がどうしても苦手で、一粒一粒、つまんで取って食べていた。もちろん、コッペパンの方をだ。そう言えば、取り出した干しぶどうはどうしたのだろう???思い出したくもないからか、記憶から抜け落ちている。

 

ところが、学生時代のこと。名古屋に遊びに行ったときのことだ。喫茶店でトーストセットを頼んだのだが、なんと、出て来たトーストはレーズンパンだった。これは大失敗したと思ったのだが、お腹が空いていたので、サラダを食べた。(今時はベジタブルファーストとか言うこだわりがあるらしいが、その時は、そんなことでも何でも無かった。)そうしたら、これが美味しいこと!どこにでもありそうな、キャベツとかレタスとかトマトを使った生野菜サラダなのだが、ちょっと違っていたのは、マヨネーズが美味しかったのと、マヨネーズに振りかけられていた香辛料が良い香りを放ち、食欲を一段とそそられたのだ。

その勢いだったのだろうか、気が付くとレーズントーストにも手が伸び、がぶり。これがまた美味しかった。ほんのりとバターの香りがする薄っすらと塗られたバター、トーストの焼き加減、そして、何よりもレーズンが美味しかった!30数年前の出来事なのに、今でも目を閉じれば浮かんでくるほどだ。

 

この日を境に、スーパーに行っても、コンビニに行っても、同じ色と香りのする香辛料とレーズンパンを探す様になり、オーブントースターでレーズンパンをトーストしてよく食べた。たわいもない話だが、人間、変われば変わるものだと自分が自分に驚いた、人生を変えた出来事だった。私の話はロマンのカケラも無いが、この短編動画はちょっとだけロマンチックでイイ。秋刀魚が食べたくなった。

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